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千曲川の水質



千曲川の水質の現状

(2)富栄養化と川底の環境

「(1)生活環境項目と健康項目の水質の現状」のように、千曲川に流れている水のBODは確かに低いが、川で釣りをする人や川底にすむ水生昆虫などを調べて川の環境を考えている人などに聞くと、「千曲川の川底は腐っている」とか「ヘドロがたまっていることがある」などという話を聞くことがある。これはどうしてだろうか。

表4に示したように湖には窒素やりんの環境基準があるが、川にはこれがない。その理由は、湖ではもともと水の中には少ない窒素やりんのような成分が増えると、ちょうど農地に窒素やりんの肥料をやると作物がよく育つように、植物プランクトンが異常に増えて、諏訪湖で一時期アオコが大発生して困ったようなような富栄養化問題(これも水質汚濁の一つの現象である)が起きるので、それを未然に防ぐためである。

千曲川には全窒素(TN)や全りん(TP)の環境基準は適用されていないが、他の生活環境保全項目といっしょに測定はおこなわれている。その最近の20年間の測定値をグラフで示したのが図4である。図には上田市の直ぐ上流側の生田の測定地点のほか、長野県の最下流の飯山市の大関橋の測定値も記入されている。

生田(上田市)および大関橋(飯山市)地点における千曲川の全窒素および全りん濃度(『長野県公共用水域水質測定結果』1980〜1999年度から作成)
図4.生田(上田市)および大関橋(飯山市)地点における千曲川の全窒素および全りん濃度(『長野県公共用水域水質測定結果』1980〜1999年度から作成)

この図4の千曲川の測定値と表4の湖の全窒素、全りんの環境基準を比較すると、千曲川の全窒素はV類型を、全りんはIV類型を、いずれもはるかに超える高い濃度であることがわかる。ちなみに平成14年度の諏訪湖(湖心)の全窒素は0.24〜1.1mg/l、全りんは0.016-0.071mg/lであるから、もし千曲川の水が堰き止められて湖になったら、以前の諏訪湖のようにアオコが大発生するにちがいない。

糸状の緑藻
珪藻
主に藍藻
図5.上田市の付近の千曲川の河床でさかんに繁殖した着生藻類。特に春、流量の安定した期間が続くとこのような状況が見られる。上:糸状の緑藻、中:珪藻、下:主に藍藻

しかしアオコは湖のような流れのない水域に発生する植物プランクトンであるから、急流の千曲川には発生しない。その代わりに、流れのある水域が富栄養化すると、川底の石につく着生藻類の増殖がさかんになる。図5は千曲川で、特に春大発生する着生藻類である。

川底が腐敗して黒くなった石の裏(上田市の下流で)
図6.川底が腐敗して黒くなった石の裏(上田市の下流で)

このような藻類は、富栄養化した湖の植物プランクトンと同じくらいの速度で成長するので、次第にちぎれて流れてゆき、下流に流速が遅いワンドや流れの縁の浅瀬があると、川底に沈殿して腐敗する。有機物(藻類も有機物である)が分解する時には、まわりの水に含まれる酸素を消費するが、やがて酸素がなくなると腐敗状態になり、硫化水素やそのほかの腐敗ガスによるドプのような臭いが出て、図6のように川底の石の裏に真っ黒い部分が見られるようになる。

長野盆地の千曲川のワンドと浮き上がったヘドロ
図7.a:長野盆地の千曲川のワンドと浮き上がったヘドロ
悪臭を放つヘドロの中身は、ほとんどが上田市あたりの川底からちぎれて流れてきた糸状緑藻だった
図7.b:悪臭を放つヘドロの中身は、ほとんどが上田市あたりの川底からちぎれて流れてきた糸状緑藻だった

千曲川は流れている水はきれいだが、川底は腐っているといわれるのは、このことである。さらに千曲川が長野盆地に達すると、勾配がゆるくなって水がゆっくり渦を巻いているワンドが現われる。このようなところに上流からちぎれ藻が流れてくると、ワンドの中に次々にそれが集まり、厚さが1mもあるヘドロ(腐泥)が堆積することがある。図7aはたまたまそのヘドロに腐敗ガスがたまって水面に浮かび上がったところである。その中身は大部分が図5の上のような、上流で増殖した糸状緑藻であった(図7b)。

このように、千曲川はBODが示す水質については著しい汚濁のない清流であるが、川底の環境まで含めて総合的に河川環境をみれば、決して清流とはいえない。その元になる原因を解き明かし、対策を考えることが、これからの千曲川の環境保全の重要な課題の一つである。

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