地球上に生命が生まれ、繁栄しているのは、太陽系の惑星の中でただ一つ地球だけに、何十億年も続いて水が存在しているためである。水の存在は、われわれ人間も含めて全ての生物の生命維持の源であり、さらに人間の社会にとっては、毎日の飲み水としてだけでなく、家庭や都市における快適な生活環境の維持や、農業、工業のための用水としても欠くことのできない資源である。特に米を主食とする日本人にとって、水田稲作のための潅漑用水は、昔から土地にも匹敵する価値をもっていたのである。
このようにあらゆる面で重要な役割を果たしている水は、ただ水でありさえすればいいというものではない。飲料水にはバクテリアなどの病原体や有害物質が含まれていてはならないし、精密工業には,ほとんど純水に近いような水が要求される。また潅漑用水や魚を育てる水には、飲料水ほど厳しくはないにしても、有害物質のない安全な水が必要である。このように、水はその目的に適した水質でなければ価値がない。
このように大切な水質も、人間が社会の進歩発展のことだけ考えて、鉱山や工場から出る汚れた廃水をたれ流したり、われわれの毎日の暮らしから出る生活排水をそのまま川に流したりすると、生き物がすめない川になってしまったり、それを知らないで飲み水にしたりすると、人間まで病気になることがある。そのため水のことを考える場合には、水質のことは忘れてはならない非常に大切な課題の一つである。 |