上田地域自然電子図鑑-千曲川と上田地域の自然はじめての方へ
サイトについて
千曲川の生き物河川のはたらき上田と千曲川-生活と歴史サイトマップもっと知りたい方へ
 
戻る


コラム



鳥の婚姻形態〜ウグイス類の一夫多妻〜 〔香川敏明〕

鳥の婚姻形態は多様です。オス1羽とメス1羽がつがいになって繁殖するのが一夫一婦です。世界に生息する野鳥の9割以上がこの一夫一婦といわれています。1羽のオスが複数のメスとつがいになるのが一夫多妻です。シジュウカラやセグロセキレイはほとんどの場合は一夫一婦ですが、ときには一夫ニ妻にもなることもあるそうです。わが国に生息するウグイスの仲間の中には、高い割合で一夫多妻のつがい関係を結ぶものもあることが、今までの研究から知られています。

発達した一夫多妻のウグイス

ウグイスのオスは、繁殖期を通じて一日中「ホーホケキョ」とよくさえずっています。このさえずりには、なわばりを知らせてそれを守る働きとメスを誘う働きがあるといわれます。なわばりをかまえたオスはそこへやって来るメスと次々につがいになって一夫多妻の関係を結びます。新潟県妙高高原の調査では1夫6妻が観察されています。ウグイスは巣作り、産卵、子育てはすべてメスの仕事で、オスはいっさい手伝いません。それが発達した一夫多妻が成り立つ大きな理由になっているようです。

たくさんのメスと結婚するセッカ

セッカのオスは、外側だけ草の葉をクモの糸で縫い合わせた求愛巣と呼ばれる巣をいくつも作り、そこへメスを誘います。こうして次々と巣を作り、メスに気に入ってもらえると交尾をしてつがい関係が結ばれます。今までの一夫多妻の最高記録は1羽のオスが18の求愛巣を作り11羽のメスとつがいになった例が観察されています。セッカの6〜8割がこのような一夫多妻のつがい関係になりますが、1羽のメスを得ることができないオスも3割います。メスは巣の内側を補修して仕上げ、産卵から子育てのすべてを行います。オスはウグイスと同じように子育てをしません。

一夫ニ妻の多いオオヨシキリ

さえずるオオヨシキリのオス
さえずるオオヨシキリのオス
 
オオヨシキリの一夫多妻
オオヨシキリの一夫多妻(菅平湿原 1983)

オオヨシキリのオスはメスより2週間ほど先に渡って来てヨシ原になわばりをかまえてさえずります。そこへメスが遅れて渡ってきてつがいになります。その関係は一夫一婦もありますが、一夫多妻も16〜46%の比率で普通に見られます。今までの各地における研究から一夫二婦が多いといわれています。オオヨシキリのオスはウグイスやセッカのオスとは異なり、ヒナに餌を与える子育てにかかわることからつがいになるメスの数が少なくなる傾向があるようです。

複なわばりで一夫多妻にもなるコヨシキリ

コヨシキリのオスはオオヨシキリのようにメスより2週間ほど先に渡って来て草原になわばりをかまえてさえずります。そこへメスが遅れて渡って来てつがいになります。オスはメスとつがいになるとさえずらなくなりますが、メスが抱卵に入ると、遠く離れた別の場所でさえずりを再開してなわばりをかまえることがあります。このように1羽のオスがもつ2つのなわばりを複なわばりといいます。長野県菅平湿原で2番目のなわばりで新たなメスとつがいになる一夫ニ妻が観察されました。

多くの鳥では少しでも多く確実に自分の子を残すために、繁殖にオスとメスが協力する一夫一婦のつがい関係を結びます。これはオスにとってもメスにとっても利益につながる形態です。では、一夫多妻のオスとメスにはどのようなメリットがあるでしょうか。オスにとっては1羽のメスよりも複数のメスとつがいになり交尾をすることは、自分の子を多く残す確立が高くなります。一方、メスにとっても、弱いオスを選んで一夫一婦になるより、一夫多妻になっても繁殖に好適ないいなわばりを持ち、優れた形質をもったオスとつがいになった方が自分の子を残すために有利であるという説があります。

戻る
ページの上へ
進む
 
上田地域千曲川自然電子図鑑
写真・図・掲載内容の著作権はそれぞれ、所蔵者ならびに出典者に帰属します。
All Rights Reserved. Copyright © Ueda City Multimedia Information Center -UMIC-